のぞき穴
2005/7/3(日) 午後 9:30 | オスカーの観察日記 | 小説
これはN社長が中学生の時にK先生から聞いた話じゃ。
林田川の側に「阿曽の晩藪」と言う林があったそうじゃ。今でもいくらか名残が残っておるが、当時は晩藪と
言うくらいじゃから鬱蒼と茂った気持ちの悪いところじゃったそうな。そこに棲んで居る狐が村人によく悪さを
しておったらしい。ある時、村中でも一番の荒くれ者の馬力引きが狐を懲らしめてやると晩藪へ出掛けていった。
馬力引きが晩藪に近づくと、土手の上で狐がちょこんと座って、木の葉を頭に乗せたらしい。すると狐はたちまち
美しい娘に変身して、しゃなりしゃなりと歩き出した。馬力引きは「狐め、又、人を化かそうとしておるな、わしはだ
まされんぞ」と後を付けていった。
娘に化けた狐は野良仕事をしている百姓に近づき、「もうそろそろ仕事をおかれて、お風呂でも召されては如何?」
と声を掛けた。百姓は「はて?この辺りに風呂など有ったかいなー」と首をかしげると「つい先日開店しました湯屋の
娘です、今日はサービスで入って貰っていますから、ご遠慮なくどうぞ」と言う。
百姓は「なに、サービスで入れてくれるんかいな」と娘の後に付いていった。
「こちらでございます、ご遠慮なくどうぞ」
「おー、すまんの」と百姓は美しい娘に着物まで脱がせて貰って風呂に入った。
「お背中も流させて頂きます」と裾をからげて白いふくらはぎまで見せる。
百姓が気持ちよさそうに入っている風呂は藪の側の田圃に掘ってある、肥溜めである。気持ちよさそうに湯で顔を
洗っているが、顔中糞まみれになっていた。
やがて、娘の色気に迷った百姓が娘に
「ちょっと、湯あたりしたで、休ませてもらえんか?」と頼むと
「それでは、離れでゆっくりお休み下さい」と案内していった。
馬力引きはその一部始終を見ながら「あの百姓、騙されているとも知らず、スケベ心を起こしやがって」と後を付けて
いった。
こぢんまりとした東屋に入った二人は障子を閉めてしまって中を見る事が出来なくなってしまった。
馬力引きはそーと近づき障子に耳を当てると、中から男女の睦言が聞こえる。聞くだけでは我慢が出来ず、指に唾を
付けて、障子紙の音を立てぬ様に覗き穴を開けた。穴を覗き込むと暗くてよく見えない、もう少し穴を大きくしようと、
もう一度指を舐めて穴を広げた。覗いてみると百姓に付いた肥溜めの匂いがぷーんと鼻に付いた。
首筋の辺りに何かさわさわと触れる物があるので、手で払いながら見ておると。遠くで馬力引きを呼ぶ声が聞こえた。
「おーい、そないなとこで、牛のケツの穴を覗いて何をしとるんじゃ。」
本日はこれにて。