お父さんが居られたと思われる山中で自殺しておりました。林道の大きな欅の下に車を停
めて薬物を飲んで死んだようです。車は赤いフェラーリでした。当時三六歳で出版関係の
会社に勤めていた事等もお父さんの話の通りです。父親は広域暴力団の幹部でして、部下
にボデーガードを命じていたようです。そんな関係で恋人も出来ず、悩んだ末に東京を離
れて自立しようとしたのですがガードの男に発見され、最後に死を選んだようです。ボデ
ーガードの男も責任をとって自殺しております。拳銃で頭を撃ち抜いていたそうです。
これは他殺説も有ったのですが、司法解剖の結果と、遺書が父親に郵送されてきた事で解
決しました。それで警察としましては二〇年前のこの件を調書に書くかどうか検討したの
ですが、事件性のない件について記入すべきでないと決まりましたので、一応口頭でお知
らせすることにしました。全く不思議な話ですが、これ以上の目撃情報もありませんし、
調査の方は一応これで打ち切りたいと思いますのでご了承下さい。何か他に気付かれたら
遠慮無くお申し出下さい。その後何か変わったことは御座いませんか?。そうですか、そ
れではそういうことで宜しくお願いします。お大事に。失礼します。」

  その後藤波達也は順調に回復し。一年後バイクでツーリング中に事故で死亡した。コー
ナーでの出会い頭に車と接触しそうになり、避けようとして側壁に激突した。
赤いフェラーリを運転していた女が岩下忍そっくりだったことは達也以外に知るよしもな
い。死に顔はうっすら笑っているように安らかだったということだ。
                                終わり


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