時々遠くでトラツグミが鳴いている。コノハズクも「仏法僧、仏法僧」と(私にはブッキ
ョッキョ、ブッキョッキョと聞こえるが)鳴き始めた。愛鳥家でもない限りこの山中で、
しかも深夜に聞くとぞっとしてしまうだろう。  女が浴室に入ってきた事で思考が中断さ
れた。
  「一緒に入らせて頂くわ」と自然に入ってきた。あわてるのも沽券に拘わると平静を装
った。着痩せする方なのか昼間見た時より豊満な乳房と腰回りだ。目のやり場に困ったが
女の行動に男の本能が目覚めてしまった。
  女は挑みかかるように私に覆い被さってきた。堰を切ったように激しく接吻をしながら
お互いをまさぐり合った。しかし、結合しようとすると急に身を硬くした。不自然な動き
に女の目を見ると、「初めてなんです」と恥ずかしそうに言った。一瞬気後れしたが後へ
は引き返せなかった。濡れた身体のままで女を抱き上げて寝室へ行った。女を横たえて優
しく愛撫していった。浴場でのような激しさはなく、私のするままに身を任せていた。堅
さを解きほぐすように時間をかけて女の身体を開かせた。潤いを与えるため秘部を舐める
と、か細いため息を漏らす。女の全身をくまなく舐め続けた。女にも私の物をくわえさせ、
羞恥心を捨て去るようにし向けた。女の秘部は充分潤っていた。接吻をしながら脚を抱え
上げ一気に挿入すると、「うっ」と呻いてしがみついてきた。痛みを耐えるように顔をし
かめていた。ゆっくり抽送を繰り返し深く埋め込んで射精した。暫く抱き合ったまま動か
なかった。外ではトラツグミが鳴き続けていた。

  時鳥のの鳴き声で目が覚めた。忍は朝食の準備をしているようだ。昨夜は処女を奪った
自責の念と、男としての満足が交錯したまま暫くは眠られなかった。忍は処女の証の付い
たシーツを取り替えて、私の側ですぐに眠ってしまった。三十半ばの女が処女であった事
が驚きであった。草引きの時の無防備さは男を知らぬが故の為だろうか?。
  雨が激しくなっていた。雨音にも負けずに時鳥が鳴き競っている。バイクで帰れる状態
ではない。娘に連絡したいが、携帯電話は繋がらないし、この家には電話は無さそうだ。
  みそ汁の好い香りが漂ってきた。一人暮らしで朝食はトーストに牛乳で済ませてきた私
には。久しぶりの香りに空腹感が増してきた。食事は鰺の開きや漬け物、卵焼き、みそ汁、
フルーツとシンプルだが私にとっては豪華な朝食だった。特に炊きたてのご飯はそれだけ
でおかずが要らないくらいだった。
  昨夜から他人でなくなった女と差し向かいで食事することが面映ゆく感じられた。忍は
何もなかったように穏やかな顔をしていた。
  「此処へは街の人は来るの?」
  「滅多に来ないわね。春には山菜採りに年寄りが上がってくるぐらい。それも希ね」
林道に残っていたオフロード車のタイヤの跡は此処までは付いていなかったが、誰も来た
事は無いのだろうか?。
  「買い物はどうするの?」
  「週に一回翻訳の原稿を街の公衆電話から送るので、そのついでにまとめ買いをするの」
  「じゃー、僕のような訪問者は?」
 「貴方が初めてよ。私、貴方のような方をずーと待っていたの」
 「どうして僕のような者を?」
 「貴方は好みのタイプなの。バイクが庭の前に止まった時には、この人が待っていた男
の人だと確信できたの。貴方は何も感じなかったかしら?」

page8へ

top