「八戒」の散歩が終わると、もう一匹のミニブタの「ブラピ」を散歩に連れて行く。
これは「八戒」より小型であるがそれだけ敏捷なのでリードで繋いでいく。走って逃げると
捕まえられないのである。「ブラピ」が用を足してしまうと店内で開店準備をする。
おしぼりの保温器のスイッチを入れ、湯を沸かし、床に掃除機をかける。テーブルを拭きな
がら砂糖壺の中をチェック、まあこの辺はいい加減である。一通り済ませたところで、マス
ターの朝食である。朝食と言ってもトーストとアイスオーレだけのシンプルなものである。
経済的にその程度のものしか食べられないのである。吾輩たちの餌代がかなりかかるので、
自分の食事は切りつめているようである。
 トーストの「へた」と残った野菜くずがヌートリアの「モモコ」の餌になる。サンドイッ
チのよく出た翌日は、パン切れがたくさん出るので「モモコ」が食べきれないほど与えてい
る。暇な日が続くと餌がもらえない日もあるので、「モモコ」はいい迷惑である。
その割にはプニュプニュとよく肥えているが・・・
 この辺で開店時刻の九時頃になる。
開店しても、客はすぐに来ない。昨日の売り上げをパソコンに打ち込んで(パソコンで管理
するほどの売り上げもないのだが)から、インターネットでニュースに目を通し、メールを
チェックする。新聞はそれから読み始める。折り込みの広告から、記事の隅々まで見ていく
のである。一時間以上新聞を読んでいるが、読み終わるまでに客が来ることはまれである。
たまに、読んでいる途中に客が来ても一区切り読み終わるまで腰を上げないので、客は暫く
待たされることになる。どちらが客か分からない態度なのである。
  超、暇な店であるが、ここで数少ない常連客を紹介しておこう。
  マスターも変わっているが、類は友を呼ぶのか浮世離れしたような者ばかりがやってくる。
五十前にもなって未だに独身のバスの運転手やダイナマイトの発破師。若い娘と援助交際を
している観光会社の社長。生臭な坊主。シナリオライターを目指している五十過ぎの独身男。
嫁に頭の上がらない土建屋の番頭。これくらいが固定客である。マスターは仲間のように思
っているので、まず客扱いはしない。それでも、文句も言わずにやってくるのである。女好
きのマスターにしては女性の固定客がほとんどいないのである。


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