一見客の中には不届きな者もたまにやってくる。吾輩は店内の中心部に居るのだが、その
横の席がマスターの居るカウンターからは死角になっている。そこで若いアベックがいちゃ
つくのである。忙しい店なら、他人の目もあってそんなことは出来ない。なにぶん超、暇な
店なので、マスターがカウンター内で本を読んでいるのを好いことに始めてしまうのである。
接吻をするくらいなら可愛い方で、男の物をくわえたり、スカートで隠しながら本番までし
てしまう強者もいる。そういうアベックが注文するコーヒーはほとんど「ギリマン」いや
「キリマンジャロ」である。
そこまでいくと、気が付いて注意するのかと思ったらマスターもマスターベーションをして
いた。
 そのような時に限って客が入ってくるのである。
  すました顔で「いらっしゃいませ」と水とおしぼりを運んでいくと、女性客が「キャー」
と悲鳴を上げた。マスターは自分の物をしまい忘れていたのである。それ以来その女性客は
上得意の固定客になったのである。
  歳は四十半ばくらいか、特別の美人でもないが結構色っぽい女性なのである。マスターの
開チン事件以来、一週間ほど経ってから三日に空けずやって来るようになった。それも暇な
時間帯を狙ったように来るのである。もっともいつも暇な店なのであるが、常連客が居るよ
うな時間帯には来ないのである。マスターも根が好きなだけに、すぐに仲良くなってしまっ
た。最初は世間話から始まって、彼女自身の事を聞いたりしてるうちに誘惑されるようにな
ってきた。
 一年ほど前に亡くなった主人にマスターがよく似ているので、寂しさを紛らせるためにつ
い足を向けてしまうと言うのである。最初に見たマスターの物も色艶形がそっくりなので、
思い出すと下半身が疼いてしまうと、潤んだ瞳で迫ってくる。こうなるとマスターも我慢が
出来ない、トイレに入って事に及んだが、途中で奥方が帰ってきた。あわてたマスターはト
イレットペーパーを持って外へ飛び出した。
 「お客さんがトイレットペーパーが切れていると言うので」と聞かれもしないことを説明
するのである。奥方はマスターが用を足していただけと思っていたのが、変な言い訳でばれ
てしまった。
みるみる間にこめかみに青筋を立てて、「切れていたのはティシュペーパーでしょー、トイ
レットペーパーの取り替えを何でズボンを脱いでせんなんのん」とマスターの股間を指さし
た。ズボンが半分ずり落ちたマスターの股間ではトイレットペーパーがひらひらと揺れてい
た。 マスターはそれ以来、女性客と会えなくなった事よりも売り上げが落ちた事の方が余
程堪えたようである。

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